新しい交通システム、「MaaS」
「MaaS(マース)」という言葉を聞いたことはありますか?デジタル技術を公共交通に活用し、多様で効率的な移動を実現するシステムのことです。
塩尻市ではシニア世代の免許返戻後の移動手段や、従来型の路線バスの運行スタイルでは補いきれない市民のニーズに応えるべく、2020年に「塩尻MaaSプロジェクト」を始動。自動運転や、AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」の実証運行を行っています。実は、私たちKADOもこの事業に深く関わっています。
一から身につける、3次元地図作製の技術
まず、自動運転用の高精度3次元地図(以下地図)の作製業務です。クライアント企業が3次元レーダー計測器とカメラにより、道路面と道路周辺の3次元位置情報を取得。KADOではこのデータを基に、地図の基盤となる部分を作製します。高速道路から始まり、今では塩尻市内の一般道の地図作製も行っています。
現在、49人のワーカーメンバー(以下メンバー)が担当ディレクターのもと活躍。うち24人は受注の増加に伴い、昨年初めに増員されたメンバーです。業務に必要なCAD操作については全くの未経験者がほとんどでしたが、クライアント自らもメンバーの育成に携わり、半年~10カ月ほどの期間でテレワークが可能なレベルの技術を習得しました。リモートであっても「チームの一員」として働くので、メンバー同士で業務や勤務時間をカバーし合えるのもKADOならでは。
メンバーからは、「専門性の高い仕事を一から教えてもらえて感謝している」、「子育てや介護で、ブランクや時間制限がある人も時間調整をしながら働ける」という声が届いています。
皆が利用しやすい「のるーと」を支える
「のるーと塩尻」は、固定のダイヤを持たず、乗りたい時にアプリや電話で希望の「のりば」(停留所)まで乗り合いバスを呼べる新しいサービス。KADOが担うのは、この電話受付業務のほか、専用アプリの操作が不安な方に対する相談窓口業務です。
「のるーと」の魅力は、待ち時間や乗車時間(平均8分)の短さと、「のりば」の豊富さ。マイカーを持たないシニア世代などからは特に、「これまで交通の便が悪く行きづらかったスーパーやコンビニ、ふれあいセンターなどにも気軽に出かけられるようになった」と喜ばれています。
従来型の市営バス「すてっぷくん」と比べ、「のるーと」の一日の平均利用者数は約5倍というデータもあり、持続可能な新しい公共交通として期待されています。
公共交通も 地産地消へ
このような事業にKADOが関わることで、都市部の企業への資金や労働力の流出をできる限り抑え、地域でお金が循環し、雇用が生まれ、それを継続する「地産地消」が可能となります。またKADOとクライアント双方にとって、地域貢献を果たすことにも繋がります。
地図作製メンバーの一人は、昨年11月に実施されたEVバスを用いた自動運転の試乗に参加。「子どもたちに〝お母さんもこのお仕事の仲間だよ〟と伝えられてうれしかったです。自分の仕事が実際に形になっていることに感動しましたし、やりがいにも繋がりました」と話します。
塩尻市では今後、「のるーと」の運行エリアを徐々に拡大するなど、MaaSの可能性を広げていく構想もあります。KADOに期待される役割はますます大きくなるでしょう。
●取材協力
マネージャー 中澤友義
ディレクター 髙田鏡子(高精度3次元地図作製担当)
ワーカーメンバー 鷲澤有香(高精度3次元地図作製担当)